AMA(American Music Awards)が開かれ、Selena Gomez(セレーナ・ゴメス)がFavorite Pop/Rock Female Artist(好きなポップ/ロック女性アーティスト)に選ばれました。セレーナと言えば、現在闘病中の身。療養に入った理由とも思われる自身の葛藤について言及しながら、感動的なスピーチを行いました。Billboardの記事Selena Gomez at the 2016 AMAs: ‘I Don’t Need Validation Anymore’を読んでみましょう。
本稿では海外記事の解説と、記事に使われている英語表現やフレーズの解説をします。海外記事を原文で読む機会の少ない人が、興味を持って原文で読もうという気持ちになってもらえれば嬉しい限りです。
本サイトでは、批評・研究の目的での引用に留め、記事全文の対訳・翻訳・和訳は、著作権や翻訳権の関係で載せていません。
原文で使われている英語表現の解説
Selena Gomez’s break from the spotlight came to an end
breakは「中止、中断、休憩」の意味。break from the spotlightで、「スポットライトを浴び続ける生活からの中断」=「休業」のことを指しているのは明白。come to an endは「終わりになる」の意。
she definitely made sure to address her personal struggles in front of millions
make sure to …は「確実に…する」というフレーズ。addressは「住所」ではなく、「…に対処する、取り組む」という意味。in front of millionsは「何百万もの(観衆)の前で。」闘病中の自信の胸中を明らかにしたということでしょう。
this stage was actually the first time that I was authentically 100 percent honest with you
セレーナの言葉。the first time that I …で「私が…する初めての機会」と意味をとります。authenticallyはここでは「本音で」、honest with Aは「Aに対して誠実に」という意味。AMAのステージで、セレーナは初めて胸の内を告白すると言っています。
she started her speech, referencing her heart-wrenching AMAs performance of “The Heart Wants What It Wants.”
referencing以下は「…しながら」と訳すのが適切です。分詞構文という英文法が使われています。heart-wrenchingは「胸を締め付けるような」という形容詞。wrenchは名詞形だと、ボルトなどを締める「レンチ」の意味です。
I think it’s safe to say that a lot of you know a lot of my life whether I liked it or not and I had to stop
it’s safe to say …はぜひ覚えておきたいフレーズです。「…と言っても差し支えない、あながち間違いではない」というような意味となります。whether A or notで「Aであれそうでないにせよ」の意。セレーナは私生活のない生活に耐えられず、止まるしかできなかったと心中を告白しています。
Because I had everything, and I was absolutely broken
前半が解釈しづらいかもしれません。直訳すると「私はすべてを持っていたから、完全に壊れてしまった」となります。セレーナの言いたいことは痛いほど伝わりますが。
I kept it together and I swore I would never let you down
keep A togetherで「Aを維持する、Aをつなぎとめる」の意味。無理をして自分を演じていたと思わせる言葉。and以下は「私はあなたたち(ファンのこと)をがっかりさせないように心に誓った。」
I kept it too much together to where I let myself down
自分をつなぎとめる努力が限界に来たという主旨。to where …は「…(という場所)まで」と意味をとります。関係副詞という用法です。let oneself downで「落ち込む。」上の文との対比になっています。
I’m not trying to get validation, nor do I need it anymore
validationは辞書を引くと「検証、確証」などの訳が出てきますが、いまいちピンときません。コウビルド英英辞典を調べたら”To validate a person, state, or system means to prove or confirm that they are valuable or worthwhile”とありました。つまり「自分の価値を証明する」ことを指します。セレーナが言いたいのは「自分の価値を証明しようともしていないし、そんな証明などいらない」ということでしょうか。nor do I …は倒置文です。否定語のnorが前に出ることで、文が倒置されます。
Choking back tears as she delivered her heartfelt speech
choke backは「感情などを抑える、のみこむ」の意。文頭がing形となっているのは分詞構文(…しながら)であるため。asは「…の時に」と意味をとればよいでしょう。heartfeltは「心からの。」
Gomez sent hope to those who have gone through the same things she has in the past couple of years
those who …で「…の人々」と訳す関係詞の慣用表現。go through …で「…を経験する」の意味。また、couple of yearsと言えば「2、3年」を指します。セレーナは過去数年間で同じような体験をした人に向けてエールを送ったということでしょう。
If you are broken, you don’t have to stay broken
「もし心が壊れているなら、そのまま壊れた状態でいる必要はない。」心からの言葉だからこそ、人の心にも感動を与えるのですね。stay …で「…のままでいる」という意味です。スティーブ・ジョブズのstay hungry, stay foolishという名言を思い出させます。
あとがき
療養中とは言え、公式の舞台で、セレーナ・ゴメスの姿を見ることができたのは、正直嬉しいです。スーパースターであっても、同じ生身の人間ですから、心が不安定になったりすることは当然あります。あまり無理をせず、しっかりと療養をして、カムバックを果たしてほしいです。
コメント
度々お邪魔して申し訳ございません。
私は、依然からアメリカや、イギリスのアスリートの異名にほぼ必ずtheが付いているのを見て、例えば the beast the king the hunter the destroyer など
なんで theをつけてるのか疑問に思っていたのですが、the は「その」なのか、「一つしかいないもの」としてのthe なのかどちらなのか考えてもわかりません。
the の意味を考える上でのコツみたいなのはあるのでしょうか?
質問ありがとうございます。theをつける場合は、確かに「一つしかないもの」もそうですし、誰の目から見ても明らかなもの、たとえば身体の部位the arm, the hand, the legなどもあると思います。コツかどうかは分かりませんが、やはり「一つしかないもの」にtheをつけて強調する用法が顕著であるような気がします。この意味合いで、He is the man.と言えば、「彼は男の中の男だ」のような使い方も可能です。the Beatlesと言えば、この世に唯一無二のバンドなのだという意味合いになるのかもしれません。aをつけるかtheをつけるかの区別は、我々日本人が思う以上に、英語圏ではくっきりと違いがあると聞きます。まとまりのない話ですみません。